気のエネルギーと、意識のエネルギーとは?

江戸時代の僧白隠禅師は、猛烈な禅修行によって心身を病み、これを内観法、軟酥の法という瞑想法により克服したという話(「夜船閑話」)はよく知られているところです。頭はのぼせ、手足は氷のように冷え、心は疲れ切って、夜も眠れないような状態だった白隠禅師は、現代的に言えば自律神経失調症にかかっていたと見ることができるかもしれません。

白隠禅師の体験は、現代人の私たちにとっても決して遠い話ではありません。実際、私も、ストレスを軽減するために始めた瞑想が却って緊張感を高めてしまい、白隠禅師の症状と全く同じような状態になってしまったことがあります。このようにして、瞑想法は、特に自力だけに基づいて進めて行こうとするとあまり上手くいかないことがあります。なぜなら、瞑想法は、心身の中における「気」の量を必然的に増やすのですが、葛藤を抱えたままの心身において「気」の量が増幅すると葛藤をさらに増してしまうということがあるからです。

こういった瞑想の副作用についてはあまり語られることがないものの、実際問題として起こり得ることとして知っておくことはよいことかと思います。このような問題が生じてしまった場合には、私たちの日常生活に目を向けてみるとよいかもしれません。

例えば、私たち日本人にとって神仏に「祈りを捧げる」、あるいは「念仏」を唱えるといったことはそう非日常的なことではありません。また、世界の様々な瞑想法においても、まず最初に祈りを捧げるといったことが日常的に行われています。ぺマコ・メソッドにおけるグル・ヨガがまさにこの「祈り」を捧げることに相当します。実は、この「祈る」という「他力」的な行為に、ヒントが隠されているようです。

というのも、「祈り」によって培われるエネルギーとは、「気」よりも微細な「意識のエネルギー」であり、この「意識のエネルギー」によって「気のエネルギー」が上手く制御され、上で述べたような「自力」による偏った修行を正してくれる効果があるのです。このことについて、キム・リンポチェに以下に説明して頂きます。

原文

私たちの心は、気(プラナ)を燃料として動くエンジンのようなものです。このエンジンには、多数のパイプや機械部品に相当する、経脈(サンスクリット語:nadi、チベット語:tsa)や中核(サンスクリット語:chakra)が備えられ、心はそれらを通して目まぐるしく流れています。多数の障害物(サンスクリット語:klesha)と業の記録が、あたかも汚れや油がキッチンの排水溝に付着するように、経脈や中核の内壁に保管されています。この汚れこそが、私たちが日常的に経験している衝動的な自己防衛反応なのです。私たちはこういった自己防衛反応を日常的に何度も何度も繰り返しています。

このような反応に基づく実存的な葛藤(サンスクリット語:dukkha)に対し、 仏教は空の瞑想によって汚れの元となる「わたし」という感覚を除去していきます。こうして、パイプの内壁から汚れが取り除かれ、人体のシステムを通過する燃料としての「気」は、知恵と、解放された自然な心とを現すものになるのです。

ヨガの世界では、呼吸法、すなわちプラナヤマによってこれを達成することができるとする考えがやや一般的ですが、これは間違いです。事実、特定の呼吸法のみを主に用いて実存的混乱を解決しようと試みた人は誰でも、単純にそれを達成できないことを知ることになります。実際に、体内システム内の気の量を増やすと葛藤はさらに悪化し、肉体的にも精神的に病気になることがあります。「わたし」を基とする混乱を減らすことなく、システム内に大量の気が流れることを想像してみてください。それは災害を引き起こすこと確実です。この理由により、私が知るすべての伝統的なヨガのシステムでは、呼吸法は 気よりも微妙なエネルギー、すなわち意識のエネルギーを養う実践法、すなわち、祈り、マントラ、グル・ヨガ、神のヨガなどを伴うことなくそれのみで実践されることはありませんでした。 この原則に従う修行者においては、意識のエネルギーが気を制御するので、業から生じる問題というものは起こっても、気の過負荷のために健康を損じるということはありません。

原則として、気に習熟することは心に習熟することにほかなりません。言い換えれば、気に習熟することは輪廻に習熟することと同じなのです。完全に自由になった人だけが気の完全な習熟を成し遂げます。これに例外はありません。

プラナヤマなどの呼吸法に習熟すると、心と気の流れが、予期しない特別な現象を生じない状態になります。予期しない現象とは、ポジティブまたはネガティブな経験を指すからです。

ぺマコ・メソッドの実践と13層ブミモデルの文脈でいうと、このような習熟は、すべてのブミを開いてそれらのいくつかを完成させることを意味します。

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